このページで解説する「最低賃金制度」とは、「未払い残業代請求」と言うよりは、もっと広義の「未払い賃金請求」の分野となります。

「最低賃金制度なんで自分には関係ない」と感じる方がいるかもしれませんが、「未払い残業代の額を計算したところ、最低賃金に満たない時給で労働させられていた」ことに気付く方も多いため、斜め読みでも構いませんが知識として押さえておいてください。

1.最低賃金制度とは?

最低賃金制度とは、「最低賃金法」に基づき、国が賃金の最低限度を定めているものです。
使用者(会社)は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。

つまり、使用者があなたに支払わなければならない賃金額(時給額)の最低値を定めているのです。

さて、未払い残業代(請求額)を概算してみた方などは、自分の「基礎時給の額(月給を時給に換算した額)」がわかっていると思います。

計算した「基礎時給の額」が「最低賃金制度の額」を下回っていた場合、未払い残業代と合わせて不足分を請求することができます

「未払い残業代の計算方法(基礎時給の計算方法含む)」や「自分の基礎時給が最低賃金を下回っていないかの確認方法」については『あなたが受け取れる残業代はいくら?』にて解説しています。

2.最低賃金の種類は?

最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

2-1.地域別最低賃金とは

産業や職種に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。
各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。

2-2.特定(産業別)最低賃金とは

「地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業(職種)」に対して適用される最低賃金です。
全国で246件の最低賃金が定められています(平成24年4月1日現在)。

「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方が適用される労働者には、高い方の最低賃金が適用されます。

3.最低賃金額より低い賃金で契約した場合は?

最低賃金法第4条には次のように定められています。

  1. 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
  2. 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

最低賃金法第4条(最低賃金の効力) 抜粋

つまり、労働者と使用者双方の合意のうえで「最低賃金額より低い賃金」を定めたとしても、それは無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされるということです。

4.使用者が最低賃金を支払っていない場合にはどうなるの?

使用者が労働者に最低賃金額を下回る額の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。

「よって、冒頭で解説した通り、「基礎時給の額」が「最低賃金制度の額」を下回っていた場合、未払い残業代と合わせて不足分を請求することができることになります」

また、最低賃金法第40条、並びに、労働基準法第120条には、支払わなかった場合の罰則も定められています。

第4条第1項(前述)の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、50万円以下の罰金に処する。

最低賃金法第40条

次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
1.~中略~ 第23条から第27条まで ~中略~ の規定に違反した者

労働基準法第120条 抜粋

最低賃金法には「地域別最低賃金」額以上の賃金を支払わない場合の罰則は定められていますが(前記の最低賃金法第40条)、「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金を支払わない場合の罰則は定められていません。これは、「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金を支払わないことは労働基準法第24条違反と解され、労働基準法上の罰則(前記の労働基準法第120条)が適用されることから二重に定められていないだけです。

よって、、罰則は次のようにまとめられます。

  • 「地域別最低賃金」額以上の賃金額を支払わない場合、最低賃金法に基づき、50万円以下の罰金に処される。
  • 「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金額を支払わない場合、労働基準法に基づき、30万円以下の罰金に処される。
この他の労働基準法に違反した場合の罰則については『労働基準法に違反した場合の罰則は「懲役?」「罰金?」』にて解説しています。

5.最低賃金制度が適用される対象者(労働者)は?

「地域別最低賃金」は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態に関係なく、セーフティネット(個人や会社に経済的なリスクが発生したときに最悪の事態から保護する仕組み)として各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。

「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されますが、下記の労働者は除きます。

「特定(産業別)最低賃金」が適用されない労働者
  • 18歳未満又は65歳以上の労働者
  • 雇入れ後一定期間未満の技能習得中の労働者
  • その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する労働者

6.最低賃金の決められ方は?

「地域別最低賃金」は、全国的な整合性を図るため、毎年、中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対し、金額改定のための引上げ額の目安が提示され、地方最低賃金審議会にて、その目安を参考にしながら地域の実情に応じた地域別最低賃金額の改正のための審議を行い決定されます。

「特定(産業別)最低賃金」は、関係労使の申出に基づき最低賃金審議会が必要と認めた場合、最低賃金審議会の調査審議を経て決定されます。

「これまでの「地域別最低賃金」の推移を見ると、毎年、平均して10円程度ずつ上昇しています。
全国の加重平均(単なる平均ではなく、都道府県ごとの労働者人数の多い少ないも考慮した平均)は下表の通りですから、今後も同程度ずつ上昇していくと考えられます。」

平成17年 18年 19年 20年 21年 22年
668円 673円 687円 703円 713円 730円
平成23年 24年 25年 26年 27年
737円 749円 764円 780円 798円

7.平成28年度 地域別最低賃金の一覧

平成28年度に発行された「地域別最低賃金」の一覧です。

北海道 786円
青森県 695円
岩手県 695円
宮城県 726円
秋田県 695円
山形県 696円
福島県 726円
茨城県 771円
栃木県 775円
群馬県 737円
埼玉県 845円
千葉県 842円
東京都 932円
神奈川県 930円
富山県 770円
石川県 757円
福井県 754円
新潟県 753円
山梨県 759円
長野県 770円
岐阜県 776円
静岡県 783円
愛知県 845円
三重県 795円
滋賀県 764円
京都府 831円
大阪府 883円
兵庫県 819円
奈良県 740円
和歌山県 753円
鳥取県 693円
島根県 718円
岡山県 757円
広島県 793円
山口県 753円
徳島県 716円
香川県 742円
愛媛県 717円
高知県 693円
福岡県 765円
佐賀県 715円
長崎県 694円
熊本県 715円
大分県 715円
宮崎県 714円
鹿児島県 715円
沖縄県 714円
最低賃金の発効(改定)時期

最低賃金の発効(改定)は毎年9~10月頃ですが、都道府県により若干前後する場合があります。最新の情報は『厚生労働省の最低賃金に関する特設サイト』を参照してください。

特定(産業別)最低賃金の額

「特定(産業別)最低賃金」は、「鉄鋼業」「業務用機械器具、電気機械器具、情報通信機械器具、時計・同部分品、眼鏡製造業」「自動車・同附属品製造業、船舶製造・修理業,舶用機関製造業、航空機・同附属品製造業」「出版業」など多岐に渡りますので、同じく『厚生労働省の最低賃金に関する特設サイト』を参照してください。

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