2017/09/09
最低賃金制度についても知っておこう
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このページで解説する「最低賃金制度」とは、「未払い残業代請求」と言うよりは、もっと広義の「未払い賃金請求」の分野となります。
「最低賃金制度なんで自分には関係ない」と感じる方がいるかもしれませんが、「未払い残業代の額を計算したところ、最低賃金に満たない時給で労働させられていた」ことに気付く方も多いため、斜め読みでも構いませんが知識として押さえておいてください。
このページの目次
1.最低賃金制度とは?
最低賃金制度とは、「最低賃金法」に基づき、国が賃金の最低限度を定めているものです。
使用者(会社)は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。
つまり、使用者があなたに支払わなければならない賃金額(時給額)の最低値を定めているのです。
さて、未払い残業代(請求額)を概算してみた方などは、自分の「基礎時給の額(月給を時給に換算した額)」がわかっていると思います。
計算した「基礎時給の額」が「最低賃金制度の額」を下回っていた場合、未払い残業代と合わせて不足分を請求することができます。
2.最低賃金の種類は?
最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
2-1.地域別最低賃金とは
産業や職種に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。
各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
2-2.特定(産業別)最低賃金とは
「地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業(職種)」に対して適用される最低賃金です。
全国で246件の最低賃金が定められています(平成24年4月1日現在)。
※「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方が適用される労働者には、高い方の最低賃金が適用されます。
3.最低賃金額より低い賃金で契約した場合は?
最低賃金法第4条には次のように定められています。
- 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
- 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
最低賃金法第4条(最低賃金の効力) 抜粋
つまり、労働者と使用者双方の合意のうえで「最低賃金額より低い賃金」を定めたとしても、それは無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされるということです。
4.使用者が最低賃金を支払っていない場合にはどうなるの?
使用者が労働者に最低賃金額を下回る額の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
「よって、冒頭で解説した通り、「基礎時給の額」が「最低賃金制度の額」を下回っていた場合、未払い残業代と合わせて不足分を請求することができることになります」
また、最低賃金法第40条、並びに、労働基準法第120条には、支払わなかった場合の罰則も定められています。
第4条第1項(前述)の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、50万円以下の罰金に処する。
最低賃金法第40条
次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
1.~中略~ 第23条から第27条まで ~中略~ の規定に違反した者労働基準法第120条 抜粋
※最低賃金法には「地域別最低賃金」額以上の賃金を支払わない場合の罰則は定められていますが(前記の最低賃金法第40条)、「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金を支払わない場合の罰則は定められていません。これは、「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金を支払わないことは労働基準法第24条違反と解され、労働基準法上の罰則(前記の労働基準法第120条)が適用されることから二重に定められていないだけです。
よって、、罰則は次のようにまとめられます。
- 「地域別最低賃金」額以上の賃金額を支払わない場合、最低賃金法に基づき、50万円以下の罰金に処される。
- 「特定(産業別)最低賃金」額以上の賃金額を支払わない場合、労働基準法に基づき、30万円以下の罰金に処される。
5.最低賃金制度が適用される対象者(労働者)は?
「地域別最低賃金」は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態に関係なく、セーフティネット(個人や会社に経済的なリスクが発生したときに最悪の事態から保護する仕組み)として各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されますが、下記の労働者は除きます。
「特定(産業別)最低賃金」が適用されない労働者 |
---|
|
6.最低賃金の決められ方は?
「地域別最低賃金」は、全国的な整合性を図るため、毎年、中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対し、金額改定のための引上げ額の目安が提示され、地方最低賃金審議会にて、その目安を参考にしながら地域の実情に応じた地域別最低賃金額の改正のための審議を行い決定されます。
「特定(産業別)最低賃金」は、関係労使の申出に基づき最低賃金審議会が必要と認めた場合、最低賃金審議会の調査審議を経て決定されます。
「これまでの「地域別最低賃金」の推移を見ると、毎年、平均して10円程度ずつ上昇しています。
全国の加重平均(単なる平均ではなく、都道府県ごとの労働者人数の多い少ないも考慮した平均)は下表の通りですから、今後も同程度ずつ上昇していくと考えられます。」
平成17年 | 18年 | 19年 | 20年 | 21年 | 22年 |
668円 | 673円 | 687円 | 703円 | 713円 | 730円 |
平成23年 | 24年 | 25年 | 26年 | 27年 |
737円 | 749円 | 764円 | 780円 | 798円 |
7.平成28年度 地域別最低賃金の一覧
平成28年度に発行された「地域別最低賃金」の一覧です。
北海道 | 786円 |
---|---|
青森県 | 695円 |
岩手県 | 695円 |
宮城県 | 726円 |
秋田県 | 695円 |
山形県 | 696円 |
福島県 | 726円 |
茨城県 | 771円 |
栃木県 | 775円 |
群馬県 | 737円 |
埼玉県 | 845円 |
千葉県 | 842円 |
東京都 | 932円 |
神奈川県 | 930円 |
富山県 | 770円 |
石川県 | 757円 |
福井県 | 754円 |
新潟県 | 753円 |
山梨県 | 759円 |
長野県 | 770円 |
岐阜県 | 776円 |
静岡県 | 783円 |
愛知県 | 845円 |
三重県 | 795円 |
滋賀県 | 764円 |
京都府 | 831円 |
大阪府 | 883円 |
兵庫県 | 819円 |
奈良県 | 740円 |
和歌山県 | 753円 |
鳥取県 | 693円 |
島根県 | 718円 |
岡山県 | 757円 |
広島県 | 793円 |
山口県 | 753円 |
徳島県 | 716円 |
香川県 | 742円 |
愛媛県 | 717円 |
高知県 | 693円 |
福岡県 | 765円 |
佐賀県 | 715円 |
長崎県 | 694円 |
熊本県 | 715円 |
大分県 | 715円 |
宮崎県 | 714円 |
鹿児島県 | 715円 |
沖縄県 | 714円 |
最低賃金の発効(改定)は毎年9~10月頃ですが、都道府県により若干前後する場合があります。最新の情報は『厚生労働省の最低賃金に関する特設サイト』を参照してください。
「特定(産業別)最低賃金」は、「鉄鋼業」「業務用機械器具、電気機械器具、情報通信機械器具、時計・同部分品、眼鏡製造業」「自動車・同附属品製造業、船舶製造・修理業,舶用機関製造業、航空機・同附属品製造業」「出版業」など多岐に渡りますので、同じく『厚生労働省の最低賃金に関する特設サイト』を参照してください。
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