2017/09/09

請求し忘れ注意!未払い残業代の「遅延損害金」と「遅延利息」の計算方法

 

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未払い残業代には「遅延損害金」と「遅延利息」という名の利息が付くということをご存知でしょうか。

例えば、あなたが銀行からお金を借りたとすれば、返済時には「元金」と「利子」を支払わなければなりません。
これは社会通念上、当たり前のこととして浸透しています。

では、未払い残業代においてはどうでしょうか。

あなたは、使用者(会社)に、未払い残業代という金銭を貸している状態です。
使用者は、あなたから、未払い残業代という金銭を借りている状態です。

ですから、あなたが「元金(残業代)」に加えて「利息(遅延損害金や遅延利息)」を請求することは、社会通念上、当たり前のことなのです。

「利息」と「利子」の使い分けについて

基本的には同じ意味であり、どちらを使っても問題ないようですが、このページでは、「利息=金銭を貸した側の目線」、「利子=金銭を借りた側の目線」として使い分けています。つまり、あたなが請求するものが「利息」であり、使用者が支払うものが「利子」です。

未払い残業代と合わせて請求できるものには「付加金」もあります。遅延損害金や遅延利息は「利子(利息)」、付加金は「罰金」です。付加金については『付加金が支払われる可能性は?期待してはいけない4つの理由』で解説しています。

それでは、利息を請求せずに損をしてしまうことがないよう、残業代請求における「遅延損害金」と「遅延利息」について解説していきます。

1.「遅延損害金」と「遅延利息」の違い

あなたから見れば、「遅延損害金」と「遅延利息」のどちらも「利息」です。

しかし、発生時期、利率(年利)、根拠となる法律などは異なります。

名称発生時期年利法律
遅延損害金在職中6%商法
遅延利息退職後14.6%賃金の支払の確保等に関する法律

2.「遅延損害金」の計算方法

遅延損害金は在職中に発生するものです。

また、「商法第514条」には次のように定められています。

商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。

商法第514条 商事法定利率

つまり、「各給料日の翌日」から「退職日」まで、年6分(年6%)の利息が付くということです。

例えば、あなたの給料日が毎月25日であれば、下表のように月毎に計算します。

4月25日に支給されるべきだった残業代4月26日から退職日まで年利6%
5月25日に支給されるべきだった残業代5月26日から退職日まで年利6%
6月25日に支給されるべきだった残業代6月26日から退職日まで年利6%

3.「遅延利息」の計算方法

遅延利息は退職後に発生するものです。

また、「賃金の支払の確保等に関する法律第6条」には次のように定められています。

事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

賃金の支払の確保等に関する法律第6条 退職労働者の賃金に係る遅延利息

つまり、「退職日の翌日」から「支払いをする日注)」まで、年14.6%の利息が付くということです。

注釈: 支払いをする日とは?

原則、請求する時点で請求額(遅延利息含む)を確定させていなければなりません。しかし、請求時点では「支払をする日(使用者が支払う日)」は確定できません。よって、「支払をする日」ではなく「計算日(請求日)」と読み替えて問題ありません。

4.「遅延損害金」や「遅延利息」は絶対に支払ってもらえるの?

ここまで、社会通念(銀行からの借り入れ例)や法律に基づいてお話をしてきました。

では、残業代請求の実務レベルではどうなのか?
私どもの経験則からお話をさせていただきます。

4-1.「遅延損害金」や「遅延利息」の請求は正当か?

未払い残業代を請求する際に、どのような利息を請求するか?については諸説あります。

言い換えれば、「遅延損害金も遅延利息も残業代請求には馴染まない(請求しない)」という専門家もいるということです。
あるいは、「遅延利息だけは請求する」という専門家もいるでしょう。

ただ、これまでに「遅延損害金」と「遅延利息」の両方を付けて請求したケースを多く見てきましたが、請求相手方(それをサポートする弁護士など専門家含む)から指摘を受けたことはありません。

つまり、諸説あるが、「遅延損害金」と「遅延利息」の両方を請求することも間違っていないと言えます。

遅延損害金や遅延利息を請求するかどうかは、あなたが相談(依頼)する専門家の見解を優先してください。

4-2.「遅延損害金」や「遅延利息」は実際に支払われるのか?

結論から言えば、これらが支払われるケースはほとんどありません。
データを取っていないため感覚値となりますが、100件中5件もないとお捉えください。

残業代請求における交渉の真髄は「どこまで譲歩し、どこで相手方と折り合うか(和解するか)?」です。
(様々な交渉要素は考慮せず、敢えて極論的に表現しています)

これは、請求相手方との示談交渉(書面でのやり取りなど)においては勿論のこと、労働審判手続き(労働問題に特化した簡易裁判)に移行した場合においても同様です。

そして、その交渉において、真っ先に削る(削られる)べきは「遅延損害金」や「遅延利息」といった利息(利子)であり、結果、これが支払われるケースはほとんどありません。

相手方経営陣の性質(性格)により、あなたの請求通りに「遅延損害金」や「遅延利息」を含めた全額を支払ってくる相手方もいますが、前記の通り、確率的には5%にも満たないものです。

4-3.なぜ、「遅延損害金」や「遅延利息」を請求するべきなのか?

「遅延損害金」も「遅延利息」も支払われる確率は低いのに、なぜ請求するべきなの?

その疑問はごもっともです。しかし、残業代請求における交渉の特性上、請求するべきと言えます。

前記の通り、残業代請求における交渉を極論的に表現すれば、「どこまで譲歩し、どこで相手方と折り合うか(和解するか)?」ですが、その交渉をディフォルメ化すると次のようなイメージです。

遅延損害金と遅延利息を含めて、213万円を請求します。

100万円を一括で支払うことで合意しないか?

150万円なら合意します。

じゃあ、120万円でどうだろうか?

交渉は書面のやり取りが主となり、相手方と直接対話するケースはほとんどありません。
前記の金額(変動幅)は例であり、証拠状況などの交渉要素によって強気にも弱気にもなります。

前記のディフォルメ化イメージのように、「請求総額」での「目減りの交渉」が繰り広げられるわけですから、交渉のスタート値となる請求額は高額であればあるほど好ましいです。

……虚偽の請求(額の上乗せ)はダメですよ。あなたが思っている以上に痛い目にあいます。

よって、「遅延損害金」や「遅延利息」を合算しても数万~十数万円ほどであるケースがほとんどですが、それでも、請求額を少しでも上げることを目的として、請求するべきと言えます。

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