2017/09/09

とっても大事なサブロク協定(36協定)の免罰的効果

 

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昨今は「残業代請求ブーム」が到来していると言っても過言ではありません。

しかし、それにもかかわらず、いまだに「サブロク協定(36協定)」を提出していない使用者(会社)が多いことには驚かされます。

そもそも、サブロク協定(36協定)を締結していなければ、法定労働時間や法定休日を超えて労働させることができないことはご存知でしょうか?

……わかりやすく言い換えます。

「サブロク協定(36協定)」を締結していなければ、法定労働時間や法定休日を超えて労働させた時点で違法です。
仮に、その分の残業代をきちんと支払っていたとして違法です。

このように、残業代を支払うとか支払わないとか以前に、労働時間の根幹となる手続きですから、このページできちんと理解しておきましょう。

1.サブロク協定(36協定)と呼ばれる理由

労働基準法第36条には次のように定められています。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。

労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)抜粋

これを要約すると、次の通りです。

  • 労働者を法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させる場合や、法定休日(1週1日または4週を通じて4日)に労働させる場合には、労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と書面による協定を予め締結しておかなければならない。
  • 締結した協定は、労働基準監督署に届け出なければならない。

このように、労働基準法の第36条に規定されていることから、「サブロク協定(36協定)」と呼称されています。

労働時間の制限には「法定労働時間(法定休日)」と「所定労働時間(所定休日)」があり、サブロク協定(36協定)においては「法定労働時間」が基準となっています。言い換えると、「所定労働時間」を超えるだけであればサブロク協定(36協定)の締結、提出は不要です。
「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いについては労働時間(残業時間)の定義を知っておこうで解説しています。

2.サブロク協定(36協定)とは?

では、サブロク協定(36協定)について、もう少し詳しく解説します。

2-1.サブロク協定(36協定)は何のためにあるのか?

労働基準法の原則では、労働基準法で定めた「法定労働時間」を超えて労働させたり、同じく労働基準法で定めた「法定休日」に労働させることを禁止しています。

しかし、画一的な原則だけでは、会社の業種や、労働者の業務内容、雇用形態によっては効率的な労働を促進できない場合があります。

そこで労働基準法には、いくつかの、いわば画一的ではない特例的な労働時間制度も定められています。
このサブロク協定(36協定)の制度を初めとして、変形労働時間制やみなし労働時間制なども特例的な制度です。

では、サブロク協定(36協定)の制度はどのような特例なのか?

サブロク協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間を超えて労働させても、法定休日に労働させても、違法(労働基準法違反)にならなくなるのです。

サブロク協定(36協定)を締結しない場合、あるいは、締結した協定の範囲を超えて労働させた場合には、法定労働時間や法定休日についての定め(労働基準法第32条から第32条の5まで、同第35条、同第40条)に違反することになるため、同第119条に則り「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます。

しかし、サブロク協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届け出ることによって、この罰が免除されます。
これを免罰的効果と言います。

2-2.サブロク協定(36協定)は何でも許される魔法の協定ではありません(1回目)

知ってか知らずか、サブロク協定(36協定)を魔法の協定であるかのように理解している使用者がいます。

「サブロク協定を提出すればいくら残業させてもいいなんて、最高ですね!」

物事には節度や限度がありますが、このサブロク協定(36協定)にも限度があります。
使用者の勝手な都合で、限度なく、何日間でも何時間でも労働時間を延長して良いというものではありません。

サブロク協定(36協定)においては、「1日」「1日を超えて3ヵ月以内の期間」「1年」の3期間それぞれについて、延長することができる時間を定めることになりますが、この内、「1日を超えて3ヵ月以内の期間」と「1年」においては、時間外労働の限度に関する基準(平10.12.28労働省告示154号 最終改正 平成21.5.29厚生労働省告示316号)にて定められている、延長することができる時間数の上限を守らなければなりません。

「1日を超えて3ヵ月以内の期間」と「1年」における上限は次の通りです。

これらの上限は、前記の通り、「法定労働時間」を超えて労働させる限度であり、「所定労働時間」を超えて労働させる限度ではありません。法定労働時間と所定労働時間の違いについては労働時間(残業時間)の定義を知っておこうで解説しています。

一般の延長限度

1週間15時間
2週間27時間
4週間43時間
1ヵ月45時間
2ヵ月81時間
3ヵ月120時間
1年360時間

1年単位の変形労働時間制の延長限度

1年単位の変形労働時間制については労働時間(残業時間)の定義を知っておこうで解説しています。
1週間14時間
2週間25時間
4週間40時間
1ヵ月42時間
2ヵ月75時間
3ヵ月110時間
1年320時間

2-3.延長限度がない事業や業務もあります

事業や業務の特性によっては、前記の延長限度を適用することが馴染まないものもあります。
そのため、次の事業や業務には延長限度が設けられていません。

延長限度が設けられていないだけであり、サブロク協定(36協定)の締結や届出が免責されているわけではありません。

  • 工作物の建設等の事業
    土木、建築、その他、工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体、または、その準備の事業が該当。
    また、製造業などの事業であっても、大規模な機械や設備の据え付け工事を行う場合も該当。
  • 自動車の運転の業務
    四輪以上の自動車の運転を主として行う業務が該当し、トラック、バス、タクシーだけでなく、社用車などの運転業務も含む。
  • 新技術、新商品等の研究開発の業務
    専門的、科学的な知識や技術を有する者が従事する新技術、新商品などの研究開発の業務が該当し、協定内容は、労働者と使用者で自主的に協議しても良いとされている。
  • 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの
    郵政事業の年末年始における業務や、船舶の改造、修繕に関する業務などが該当。
    「1年」の期間においては、前記の延長限度が適用されます。

2-4.サブロク協定(36協定)は何でも許される魔法の協定ではありません(2回目)

「サブロク協定に上限があることはわかったけど、でもその範囲内なら残業代を支払わなくてもいいなんて、やっぱり最高ですね!」

「サブロク協定を締結したからといって、残業代の支払いまでが免除されるわけではありません。あくまで、労働時間を延長しても良いというものであり、残業代はきちんと支払わなければなりません。」

3.特別条項付サブロク協定(36協定)とは?

さて、ここまでは、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、サブロク協定(36協定)の締結と提出が必須である旨を解説してきました。

ただ、臨時的に限度時間[サブロク協定(36協定)で定めた時間]を超えて労働させなければならないような、特別の事情が発生することも考えられます。

その場合、「特別条項付サブロク協定(36協定)」を締結すれば、限度時間を更に延長して労働させることができます。

この特別条項付サブロク協定(36協定)を締結、適用するには次の要件を満たしている必要があります。

  1. 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること。
  2. 限度時間を超えて労働させなければならない特別の事情をできるだけ具体的に定めること。
  3. 「特別の事情」は、次のア、イに該当するものであること。
    ア.一時的又は突発的であること(下表参照)
    イ.全体として1年の半分を超えないことが見込まれること
  4. 一定時間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続きを、協議、通告、その他具体的に定めること。
  5. 限度時間を超えることのできる回数を定めること。
  6. 限度時間を超える一定の時間を定めること。
  7. 限度時間を超える一定の時間を定めるに当たっては、当該時間をできる限り短くするよう努めること。
  8. 限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率を定めること。
  9. 限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率は、法定割増賃金率(25%)を超える率とするよう努めること。
臨時的と認められるもの
  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレームへの対応
  • 機械のトラブルへの対応
 臨時的と認められないもの
  • (特に事由を限定せず)業務の都合上必要な時
  • (特に事由を限定せず)業務上やむを得ない時
  • (特に事由を限定せず)業務繁忙な時
  • 使用者が必要と認める時
  • 年間を通じて適用されることが明らかな事由
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