2017/09/09

あなたが受け取れる残業代はいくら?初心者のための計算方法

 

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未払い残業代の計算には「労働基準法などの法条例に関する知識」が必要です。
あなたにはそのような知識はないかもしれませんし、法的専門用語に頭が痛くなるかもしれません。

……それは仕方がないことです。
だって、何が得意で何が不得意かなんて、これまでの職歴に左右されているだけですから。

ですが、あなたの未払い残業代が100万円あったらどうでしょうか?
もともとあなたが受け取っているはずの、あなたの100万円です。

絶対に取り戻したいと思いませんか?
不得意だからと放置(逃避)している場合ではないですよね?

ましてや、時間が経てば経つほど、時効による消滅によって、あなたの請求額はどんどん減っていってしまいます。

時効による消滅については『残業代は2年分しか請求できない!時効を中断して最大額を請求する』で解説しています

知識の不足は私たちが全面的にバックアップしますから、あなたは100万円(仮)を受け取った時のことを強くイメージして、最初の一歩を踏み出してほしいです。

その最初の一歩が「残業代の計算」です。

専門家にサポートを依頼するつもりの方は「概算(おおよその見積もり)」で構いません。自分で請求アクションを起こすつもりの方は「精算(詳しい計算、間違いのない計算)」でなければなりません。労働基準法に則った間違いのない計算書が必要な方は専門家への依頼もご検討ください。

「概算」「精算」いずれの場合も、まず重要なことは、このページで「残業代の基本的な計算方法を理解すること」と「自分の未払い残業代の額を知ってモチベーションを上げること」です

ステップ1.基礎時給の計算

基礎時給」とは「あなたの給料月額を時給(1時間当たりの賃金額)に換算した額」です。

給料制度には年俸制や月給制、日給制など様々ありますが、どの制度の場合も、残業代の計算は時給換算することから始めます。

基礎時給の計算式
基礎時給 = 基礎賃金[月額給料 - 除外手当(後述A)] ÷ 月間所定労働時間(後述B)

イメージとしては、「基礎時給」は、「給料月額」を「月間所定労働時間」で割ったものです。

しかし、給料月額の中には、「通勤手当」「住宅手当」「家族手当」などの労働対価ではない、どちらかと言うと福利厚生に該当するものも含まれています。
よって、純粋な労働対価における基礎時給を算定するために、前式のように、福利厚生などを「除外手当」として差し引く必要があるのです。

また、年俸制においては、「給料月額」を確定しづらいことから次のように計算します。

基礎時給の計算式(年俸制)
基礎時給 = 基礎賃金[年俸額(賞与含む) - 年間除外手当(後述A)] ÷ 12ヵ月 ÷ 月間所定労働時間(後述B)

年俸制以外の場合、「賞与」は、「除外手当」に該当し、「基礎賃金」には含まれません。
年俸制の場合、「賞与」は、「除外手当」に該当せず、「基礎賃金」に含みます(理由は後述)。

A.除外手当とは?

労働基準法並びに労働基準法施行規則によれば、給料月額から差し引かなければならない「除外手当」は次のものです。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金(結婚手当、決算賞与など) 年俸制の場合に通常賞与は該当しない
  7. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の手当(賞与など) 年俸制の場合は該当しない
  8. (定額残業代など、残業代として支給されているもの)
年俸制における賞与が除外手当に該当しない理由

賞与の基本定義は「勤務成績などに応じて支給され、その額があらかじめ定められていないもの」であるため、前記「6.臨時に支払われた賃金」に該当しますが、年俸制における賞与は「その額があらかじめ定められているもの」であるため、該当しません。

また、前記「7.1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の手当」に該当すると思われる方もいますが、年俸制における賞与の支払い期間は「会社が自由に決めているに過ぎない」ため、該当しません。実際、賞与分を2等分して年2回支給している会社もありますが、12等分し毎月支給している会社もあります。

上記1~5の手当は、その名目(手当の名称)ではなく、支給実態に即して除外されるべきかどうか判断されなければなりません。
例えば、名目は家族手当であっても、社員全員に一律5,000円が支給されている場合、配偶者や子の人数に関係なく一律10,000円が支給されている場合などは、家族手当本来の趣旨から逸脱しているため、「除外手当」には該当しません。
「皆勤手当」「営業手当」「役職手当」「職務手当」「地域手当」などを除外する必要はありませんが、それらが前記の手当(特に6~8)に該当しないか、やはりその支給実態(趣旨)から判断する必要があります。

5. 割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)抜粋

労働基準法第37条第5項 の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項 及び第四項 の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

労働基準法施行規則第21条

参考: 自分の基礎時給が最低賃金を下回っていないか?の計算

自分の基礎時給が最低賃金を下回っていないか?を確認したい場合、前記の「除外手当」を下記に読み替えて計算してください。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当、決算賞与など) 年俸制の場合に通常賞与は該当しない
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) 年俸制の場合は該当しない
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

最低賃金については『最低賃金制度についても知っておこう』にて解説しています。

B.月間所定労働時間とは?

月間所定労働時間や月間所定休日などの「所定労働時間」は、「雇用(労働)契約書」や「就業規則」によって、使用者(会社)ごとに定められているため、何時間であるとは一概には言えません。
言い換えれば、月間所定労働時間が「雇用契約書」や「就業規則」によって定められていれば(且つ、それが違法でなければ)その時間数を用いて計算してください。

一方で、「雇用契約書を締結していない」「就業規則が作成されていない(周知されていない)」などの理由から、自分の月間所定労働時間を知ることができない場合もあります。

その場合は、労働基準法第32条に基づいた月間所定労働時間「173.8時間(根拠は後述の式の通り)」を用いて計算すれば問題ありません。

173.8時間の計算式
月間所定労働時間(173.8時間) = ( 365日 ÷ 7日 ) × 40時間 ÷ 12ヵ月

労働基準法は労働者を保護するための法律であり、労働者の権利の最低基準を定めている法律です。
つまり、労働基準法で定められた基準よりも低いものは認められないことから、「自分の労働条件がよく分からない」という場合には、労働基準法(最低基準)に基づいて計算すればほとんどの場合は問題はありません。

この「月間所定労働時間(173.8時間)」の計算式には、労働基準法の大原則である「法定労働時間(使用者は労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない)」を用いています。

具体的には、次の考え方です。

  • 1年間の日数は365日である、それを7日で割ることで、1年間の週数を算定。
  • 算定した1年間の週数に40時間を掛けることで、1年間に働いても違法とならない労働時間数を算定。
  • 算定した1年間に働いても違法とならない時間数を12ヵ月で割ることで、1ヵ月に働いても違法とならない労働時間、つまり、労働者にとっては最低基準の月間所定労働時間を算定。
「所定労働時間」や「法定労働時間」については『労働時間(残業時間)の定義を知っておこう』で解説しています。

ステップ2.割増時給の計算

「基礎時給」とは「あなたの1時間当たりの賃金額」を指しました。

一方で、「割増時給」とは「あなたの残業1時間当たりの賃金額」を指します。

割増時給の計算式
割増時給 = 基礎時給 × 各残業時間帯における割増率(下記C)

割増時給の計算は、各残業時間帯の割増率さえ判れば非常に簡単です。

C-1.各残業時間帯における割増率とは?

「各残業時間帯における割増率」も、「雇用(労働)契約書」や「就業規則」によって、使用者(会社)ごとに定められているため、何パーセント(%)であるとは一概には言えません。
言い換えれば、割増率が「雇用契約書」や「就業規則」によって定められていれば(且つ、それが下表のパーセンテージを下回っていなければ)そのパーセンテージを用いて計算してください。

しかし、これも前記の月間所定労働時間同様に、自分の各残業時間帯における割増率を知ることができない場合もあると思います。

その場合は、労働基準法第37条に基づいた割増率(下表)を用いて計算すれば問題ありません。

【1】所定労働時間(注)を超えた労働
基礎時給の0%割増( 基礎時給 × 1.00 )
【2】法定労働時間(注)を超えた労働
基礎時給の25%割増( 基礎時給 × 1.25 )
【3】法定休日(注)の労働
基礎時給の35%割増( 基礎時給 × 1.35 )
【4】深夜労働(午後10時から翌午前5時まで)
基礎時給の25%割増( 基礎時給 × 1.25 )
【5】法定労働時間を超え、且つ、深夜労働 【2】+【4】
基礎時給の50%割増(法定労働時間外労働25%+深夜労働25%)
【6】法定休日、且つ、深夜労働 【3】+【4】
基礎時給の60%割増(法定休日労働%+深夜労働25%)
注釈: 「所定労働時間」と「法定労働時間」については『労働時間(残業時間)の定義を知っておこう』で、「法定休日」については『残業代が支払われる休日は?休日、休暇、休業、代休、振替休日の違い!』にてそれぞれ解説しています。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法第37条第1項(時間外、休日及び深夜の割増賃金) 抜粋

C-2.大企業においては割増率がさらに上がります

平成22年4月1日に労働基準法が改正され、労働基準法第37条に新たな条文が加わりました。
この際、長時間の残業を強力に抑制することを目的として、残業に関する使用者の経済的負担が加重されました。

具体的には、「一部の使用者」における、「一部の時間帯」において、前記の「割増率」が引き上げられたのです。

一部の使用者とは?

一部の使用者(会社)とは、いわゆる大企業のみ指します。
中小企業については当分の間、猶予措置が取られていますので、下表の中小企業に勤務している方は無視して構いません。

中小企業の範囲
資本金の額又は出資の総額及び常時使用する労働者数によって判断されます(事業場単位ではなく企業単位)。

  1. 小売業 資本金の額若しくは出資の総額が5,000万円以下又は常時使用する労働者数が50人以下である場合
  2. サービス業 資本金の額若しくは出資の総額が5,000万円以下又は常時使用する労働者数が100人以下である場合
  3. 卸売業 資本金の額若しくは出資の総額が1億円以下又は常時使用する労働者数が100人以下である場合
  4. その他の業種 資本金の額若しくは出資の総額が3億円以下又は常時使用する労働者数が300人以下である場合
稀に、中小企業であっても就業規則などにこれらの旨が定められていない場合があります。その場合には、大企業、中小企業の範囲に拘わらず、引き上げた割増率で計算して構いません。

一部の時間帯とは?

一部の時間帯とは、次の時間を指します。

  • 1ヵ月間における「残業時間」が60時間を超えた場合、その「60時間を超えた部分」が対象。
  • 「残業時間」とは、「所定労働時間を超えた時間」を指す(法定労働時間ではないので注意)。
  • 但し、ここで言う「残業時間」には「法定休日の労働時間」は含まない

割増率の引き上げとは?

1ヵ月における残業時間が60時間を超えた部分については、前記の割増率の一覧表に、下表の要素を加えて計算します。

【1】1ヵ月における残業時間が60時間を超えた労働
基礎時給の50%割増( 基礎時給 × 1.50 )
【2】1ヵ月における残業時間が60時間を超え、且つ、深夜労働
基礎時給の75%割増(60時間越え50%+深夜労働25%)
【注意】法定休日の労働
基礎時給の35%割増( 基礎時給 × 1.35 )
月間60時間のカウントには含めないし、50%割増の影響も受けない。つまり、前表と変わらず。

60時間を超えた部分の代替休暇とは?

長時間の残業を強力に抑制することを目的として、残業に関する使用者の経済的負担が加重されたわけですが、中には、臨時的な特別の事情などによってやむを得ず、60時間を超えてしまう場合も考えられます。

そのため、労働者に対しては休息の機会を与えることを目的として、使用者に対しては救済的措置を与えることを目的として、「60時間を超えた部分」と「有給休暇」を代替できることになっています。

「60時間を超えた部分」と「有給休暇」の交換(相殺)と言えます。

但し、この「代替」は簡単ではありません。煩雑な手続きや管理が必要とされます。
具体的には、換算率(有給休暇1日=8時間という単純な計算ではない)などの諸事項を定めた労使協定の締結、複雑な労働時間管理です。

平成22年の法改正当時、リーディングカンパニーであるトヨタ自動車も、その煩雑な手続きや管理を理由に、代替制度の導入を見送ったほどです。

本来の目的は長時間の残業を抑制することであり、代替制度はあくまで救済的なものです。手続きや管理に時間を取られるくらいなら残業を減らすべきですよね。よって、代替制度の詳細はまた機会があれば解説します。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法第37条第1項(時間外、休日及び深夜の割増賃金) 抜粋

ステップ3.残業代総額の計算

最後のステップです。

あなたは、ステップ2の各残業時間帯に何時間ずつ労働しているでしょうか?
その各月間累計時間は何時間何分でしょうか?

ここまでのステップで、「あなたの各残業時間帯における割増時給」が算定されていますので、最終ステップでは、それに「各残業時間帯における残業時間数」を掛ければ、残業代の計算が完了します。

残業代総額の計算式

残業代は1ヵ月ごとに算定し、最後にすべてを合算します。

各残業時間帯における残業代 = 各残業時間帯の割増時給 × 各残業時間帯における月間残業時間数

月間残業代 = 各残業時間帯における残業代をすべて合算

残業代総額 = 月間残業代をすべて合算

未払い残業代を請求する際には利息を付加して請求することを奨めています。利息の計算方法については『請求し忘れ注意!未払い残業代の「遅延損害金」と「遅延利息」の計算方法』で解説しまします。
冒頭にて少し触れましたが、残業代を含む未払い賃金は、過去2年分のみ請求することができます(退職金は5年前まで)。「過去2年の定義」「時効」「時効の中断(停止)」などについては『残業代は2年分しか請求できない!時効を中断して最大額を請求する』をあわせて読むと理解が深まります。
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