これまで、「法定労働時間」や「所定労働時間」、「法定休日」や「所定休日」について解説してきました。

また、「サブロク協定(36協定)」を締結、提出することで、法定労働時間を超えて労働させることが可能になることも解説してきました。

これら労働基準法の大原則を簡単にまとめてしまえば、次の通りです。

  • 労働基準法の原則として、法定労働時間を超えて労働させることや、法定休日に労働させることを禁止している。
  • 但し、サブロク協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間を超えて労働させても、法定休日に労働させても、違法にならなくなる(延長する労働時間には上限あり、残業代の支払いが免除されるわけではない)。
法定労働時間や所定労働時間については『労働時間(残業時間)の定義を知っておこう』、法定休日や所定休日については『残業代が支払われる休日は?休日、休暇、休業、代休、振替休日の違い!』、サブロク協定(36協定)については『とっても大事なサブロク協定(36協定)の免罰的効果』にて、それぞれ解説しています。

「前記の3ページは、正しい残業代を計算するための基礎となります。これらを理解できていないと計算を最初からやり直すことにもなりかねないため、参考にしていただければ幸いです」

さて、本題に戻ります。

一方で、仮にサブロク協定(36協定)を締結、届け出ていたとしても、時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時)の全て、あるいは、一部が制限される労働者がいることはご存知でしょうか。

もしかすると、使用者側も労働者側も知らず知らずの内に労働させて(労働させられて)しまっているかもしれません。
制限される労働者の種類はたったの3つですので、このページできちんと理解しておきましょう。

1.年少者

年少者とは、18歳未満の人を指します。

1-1.年少者の時間外労働制限

労働基準法第60条には次のように定められています。

第36条の規定は、満18歳に満たない者については、これを適用しない。

労働基準法第60条(労働時間及び休日)抜粋

労働基準法第36条とは、サブロク協定(36協定)について定められている条項です。

つまり、年少者については、サブロク協定(36協定)を締結していたとしても、法定労働時間を超えて労働させることも、法定休日に労働させることもできません

また、参考までにですが、年少者の下には「児童」という括りがあります。
児童とは「満15歳に達した日以降に到来する最初の年度末」を迎えていない人を指しますが、児童に至っては就業(労働)自体が禁止されています。

1-2.年少者の深夜労働制限

労働基準法第61条には次のように定められています。

  1. 使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満16歳以上の男性については、この限りでない。
  2. 厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後11時及び午前6時とすることができる。
  3. 交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第1項の規定にかかわらず午後10時30分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前5時30分から労働させることができる。
  4. 前3項の規定は、第33条第1項の規定(災害その他避けることのできない事由)によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第1第6号(農林の事業)、第7号(水産の事業)若しくは第13号(保健衛生の事業)に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない。

労働基準法第61条 抜粋

つまり、年少者については、下表の例外を除き、深夜労働をさせることはできません

例外) 深夜労働(全時間帯) 可
  •  交替制(満16歳以上の男性に限る)
労働基準法第61条1項による
  • 災害時
  • 非常時
労働基準法第61条4項による
  • 農林事業
  • 水産事業
  • 保健衛生業
  • 電話交換業務
例外) 午後11時まで 可
  •  厚生労働大臣の許可を受けた者
労働基準法第61条2項による
例外) 午後10時30分まで 可
  •  交代制(労働基準監督署長の許可を受けた者)
労働基準法第61条3項による

2.妊産婦

妊産婦とは、妊娠中の女性、及び、産後1年を経過しない女性を指します。

2-1.妊産婦の時間外労働制限

労働基準法第66条には次のように定められています。

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第36条の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

労働基準法第66条 抜粋

つまり、妊産婦については、請求(要望)があった場合には、サブロク協定(36協定)を締結していたとしても、法定労働時間を超えて労働させることも、法定休日に労働させることもできません

但し、当該妊産婦が「管理監督者」である場合にはこの限りではありません。

「管理監督者」については『管理職にも残業代を!「名ばかり管理職」「管理監督者」の定義』で解説しています。

2-2.妊産婦の深夜労働制限

妊産婦については、請求(要望)があった場合には、深夜労働をさせることはできません(前記の年少者のような例外もありません)。

3.育児、介護を行う労働者

育児を行う労働者とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(男性を含む)を指します。

介護を行う労働者とは、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間に亘り常時介護を必要とする状態)にある、対象家族[配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある人を含む)、父母、子、配偶者の父母、あるいは、同居し且つ扶養している祖父母や兄弟姉妹、孫]を介護する労働者(男性を含む)を指します。

この「3.育児、介護を行う労働者」の項においてのみ、労働者の中に、「国家公務員」「地方公務員」「当該特定独立行政法人の職員」も含みます。

3-1.育児、介護を行う労働者の時間外労働制限

育児を行う労働者と、介護を行う労働者の制限内容は異なるため、項目を分けて解説します。

「育児」を行う労働者の時間外労働制限

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」第17条には次のように定められています。

事業主は、労働時間を延長することができる場合において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求したときは、制限時間(1ヵ月について24時間、1年について150時間)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

  1. 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  2. 前号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

育児介護休業法 第7章 時間外労働の制限 第17条 抜粋

つまり、育児を行う労働者については、(次の例外を除き)サブロク協定(36協定)を締結していたとしても、請求(要望)があった場合には、法定労働時間を超えた労働時間と法定休日の労働時間の合計が、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超えて労働させることはできません

例外) 時間外労働 可
  • 客観的に事業の正常な運営を妨げると解せる場合
  • 当該事業主に雇用されている期間が1年未満の労働者から請求(要望)があった場合

「介護」を行う労働者の時間外労働制限

前記「育児介護休業法 第7章 時間外労働の制限 第17条 抜粋」は、育児を行う労働者のみではなく、介護を行う労働者にも準用されます。

具体的には、同条項内、「当該子を養育する」を「当該対象家族を介護する」に、「子」を「対象家族」に、「養育」を「介護」に読み替えて準用します。

つまり、介護を行う労働者についても、(前記の例外を除き)サブロク協定(36協定)を締結していたとしても、請求(要望)があった場合には、法定労働時間を超えた労働時間と法定休日の労働時間の合計が、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超えて労働させることはできません

なお、育児介護休業法が平成22年6月30日に改正施行されたことによって、「育児を行う労働者の時間外労働制限」に新たなルールが加わりました。

改正された育児介護休業法第16条の8には、次のように定められています。

事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、 (中略) 請求をできないものとして定められた労働者に該当しない労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

育児介護休業法 第6章 所定外労働の制限 第16条の8 抜粋

つまり、「3歳に満たない子を育児する労働者」については、(次の例外を除き)サブロク協定(36協定)を締結していたとしても、請求(要望)があった場合には、所定労働時間(法定労働時間ではなく会社ごとに定める勤務時間)を超えて労働させることも、所定休日(法定休日ではなく会社ごとに定める休日)に労働させることもできません

例外) 時間外労働 可
  • 客観的に事業の正常な運営を妨げると解せる場合
  • 労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)との労使協定によって、請求(要望)できないと定められている労働者から請求(要望)があった場合

3-2.育児、介護を行う労働者の深夜労働制限

育児を行う労働者と、介護を行う労働者の制限内容は同じであるため、項目を分けずに解説します。

「育児」「介護」を行う労働者の深夜労働制限

育児介護休業法第19条には次のように定められています。

事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後10時から午前5時までの間において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

  1. 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
  2. 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者
  3. 前二号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

育児介護休業法 第8章 深夜業の制限 第19条 抜粋

なお、前記「育児介護休業法 第7章 時間外労働の制限 第19条 抜粋」は、育児を行う労働者のみではなく、介護を行う労働者にも準用されます。

具体的には、同条項内、「当該子を養育する」を「当該対象家族を介護する」に、「子」を「対象家族」に、「養育」を「介護」に読み替えて準用します。

つまり、育児、介護を行う労働者については、(次の例外を除き)請求があった場合には、深夜労働をさせることはできません

 例外) 深夜労働 可
  •  客観的に事業の正常な運営を妨げると解せる場合
  • 当該事業主に雇用されている期間が1年未満の労働者から請求(要望)があった場合
  • 請求(要望)した労働者に、当該深夜時間帯において、当該小学校就学の始期に達するまでの子を保育できる人がいる場合

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